コラム

保育所の外遊びが育む心身と非認知能力 効果を最大化する時間設計・環境づくり・安全なリスクテイク

保育所での外遊びは子どもの身体発達にどのような影響を与えるのか?

ご質問ありがとうございます。

保育所での外遊びは、単に体を動かす機会というだけでなく、身体発達の多面的な基盤をつくる重要な要素です。

以下では、どのような身体発達上の効果が期待できるのかを領域別に整理し、可能な限り研究的な根拠も示します。

1) 体力・運動量(MVPA)と心肺機能・肥満予防
– 外遊びは、室内遊びに比べて中高強度の身体活動(MVPA)を促しやすいことが、系統的レビューや観察研究で繰り返し示されています。

園庭や公園に出るだけで歩数や心拍の上がる活動が増え、総活動量が増加します(Carsonら 2017、Tandonら 2012、Engelenら 2013)。

– MVPAの増加は、幼児期からの心肺持久力の向上や脂肪過多の予防と関連します。

幼児は生理的に持久的運動の持続は短いですが、短い高強度の反復(走る・追いかけっこ・鬼ごっこなど)が心肺系に十分な刺激を与えます。

外遊び時間が長い園ほど、子どもの座位時間が短く、体格指標(BMI zスコア)が好ましい傾向が見られます(Carsonら 2017)。

– 指針面でも、WHOは3–4歳児で1日合計180分以上(うち少なくとも60分は息がはずむ強度)の身体活動を推奨し、外遊びはこの達成に最も効率的です(WHO 2019ガイドライン)。

日本でも文部科学省の「幼児期運動指針」で、毎日少なくとも60分以上の活発な遊びが推奨されています。

2) 基本的運動動作(FMS)・バランス・協調性
– 走る・跳ぶ・投げる・登る・くぐるといった「基本的運動動作(Fundamental Movement Skills)」は、将来のスポーツ技能や生涯の身体活動の基盤です。

起伏のある地面、不整地、斜面、段差、低木、遊具など多様な「足場」がある屋外では、自然と多様な動作が引き出され、巧みさ(アジリティ)、バランス、コーディネーションが鍛えられます。

– 自然環境を活用する園(森のようちえん等)では、従来型園に比べ、平衡性・敏捷性・筋持久力などのモーターフィットネスの伸びが大きかったとする準実験的研究が報告されています(Fjørtoft 2004)。

– ルーズパーツ(枝・石・丸太・水・砂など)を用いた自由な外遊びは、多関節の協調や手指の巧緻性、体幹の安定化に寄与します。

固定化された遊具だけでなく「環境が子どもにどんな動きを誘発するか(アフォーダンス)」が重要です。

3) 骨・筋の発達(骨密度・筋力・姿勢)
– 幼児期は骨形成が旺盛です。

跳躍や着地、走行、登る・ぶら下がるなどの荷重刺激は骨ミネラルの沈着を促し、骨強度の向上に寄与します。

屋外の多様な地面(硬い・柔らかい・傾斜)での反復刺激は、室内の平坦で衝撃が少ない環境より、骨・腱・靱帯への有益な負荷を生みやすいと考えられています(発育期の運動負荷と骨形成に関する小児運動生理の知見に整合)。

– 不整地での遊びは、足部アーチや下肢アライメント、姿勢制御に関わる深部筋(体幹・股関節周囲)の活動を引き出し、転倒予防や正しい運動姿勢の学習に役立ちます。

4) 感覚統合(前庭・固有感覚)と視機能
– 滑る・回る・ぶら下がる・よじ登る等の動きは前庭感覚への入力を増やし、バランス反応や眼球運動の協応を鍛えます。

凸凹・傾斜の上を不規則に歩くことは固有感覚(関節・筋の自己受容)の発達に有利で、転回や姿勢調整の精度が上がります。

– 屋外光への曝露は、近視の新規発症リスクを低減する強い根拠があり、学校年代のクラスターRCTで、1日40分の屋外活動追加により近視発症が有意に抑制されました(Heら 2015, JAMA)。

対象は小学生ですが、機序(明るい光による網膜ドーパミン分泌増加など)は幼児にも当てはまると考えられ、保育所段階からの屋外時間確保は視機能の保護に資する可能性があります。

5) 免疫・ビタミンD・睡眠と回復
– 日光暴露は皮膚でのビタミンD合成を高め、骨代謝や免疫調整に寄与します(SACN 2016)。

日焼け対策と両立しつつ、日中の適度な屋外時間が栄養と合わせてビタミンD状態を下支えします。

– 自然に触れる外遊びは環境微生物との接触を増やし、免疫系の成熟を促す可能性があります。

保育園の園庭に土壌・植生を導入した介入で、数週間で皮膚・腸内マイクロバイオームの多様性や免疫指標(制御性T細胞、IL-10)が改善した報告があります(Roslundら 2020, Sci Adv)。

– 日中の十分な身体活動と自然光は、概日リズムを整え、夜間睡眠の質と入眠のスムーズさを改善しやすいという報告があり、成長ホルモン分泌や組織修復の効率化を通じて身体発達を後押しします(幼児における活動量と睡眠の関連に関する観察研究群に整合)。

6) リスク・コンピテンスと身体的自立
– 適切に見守られた「挑戦的な遊び」(高い所に上る、速く走る、不安定な場所を渡る等)は、危険の見積もり能力(リスク・コンピテンス)を育てます。

これは転倒・衝突を避けるための身体の使い方や反応時間の改善につながり、結果として外傷リスクの低減や運動自信の形成に寄与します(Brussoniら 2015の系統的レビュー)。

7) 環境デザインと保育の関わり方が鍵
– 身体発達への効果は「どれだけ外に出たか」だけでなく「どんな外環境で、どのように遊べたか」に依存します。

推奨される工夫は以下です。

– 多様な地形と素材 傾斜、段差、芝・土・砂・水、丸太や岩など、体に多様な負荷と動きの選択肢を与える。

– 可動的なルーズパーツ 木片、布、箱、タイヤ等。

自分で構成・組み替えできる素材が創造的かつ多面的な動作を引き出す。

– 自然要素の導入 植栽・畑・虫探し・水場。

微細運動と粗大運動が交差し、季節性や探究心が活動時間を延ばす。

– 保育者の関わり 安全の枠を明確にしつつ、過度に介入せず見守り、挑戦の段階づけを支援する。

簡単な運動課題(ジャンプの連続、ケンケン、平均台遊びなど)を環境に織り込む。

8) 推奨量と園での実践の目安
– 3–5歳 1日合計180分以上の身体活動(うち少なくとも60分は息がはずむ強度)が望ましい(WHO 2019)。

保育所では午前・午後にそれぞれ30–60分の屋外時間を確保すると達成しやすい。

– 日本の幼児期運動指針でも、毎日60分以上の活発な遊びを推奨。

外遊びはこの中核になります。

天候で外に出られない日には、屋内でのサーキットやダイナミックな遊びで代替しつつ、可能な日は積極的に屋外へ。

9) 安全配慮と季節対応(効果を最大化するための現実的ポイント)
– 夏季 暑熱対策(時間帯調整、日陰、帽子・こまめな水分補給、ミストや水遊びの活用)。

– 冬季 重ね着で可動性を確保、短いセッションを複数回、地面状況(凍結・滑り)に応じた活動を選択。

– 環境安全 転落・衝突のハザード把握、素材・遊具の点検、年齢に応じた挑戦設定。

これらは「挑戦の機会を奪わずに安全域を広げる」観点で最適化します。

総合的なまとめ
– 保育所での外遊びは、単に「体力がつく」だけでなく、心肺持久力、骨・筋の強化、基本運動動作やバランス・協調性、感覚統合、視機能保護(近視予防に資する可能性)、免疫の成熟、睡眠の質向上など、身体発達の多領域に波及効果をもたらします。

– 効果のメカニズムは、(1) MVPAの増加、(2) 不整地・自然素材による多様な荷重と運動課題、(3) 太陽光・自然環境がもたらす生理的・免疫的刺激、(4) 自律的で挑戦的な遊びが生み出す学習、に整理できます。

– 実践面では、屋外時間の十分な確保に加え、環境の多様性と可動的素材、保育者の「見守りと段階づけ」、季節ごとの安全配慮が、身体発達の効果を最大化します。

主な根拠・参考
– WHO. Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age. 2019.
– 文部科学省. 幼児期運動指針(幼児期運動ガイド). 日本の推奨として、毎日少なくとも60分の活発な遊びを提示。

– Carson V, Lee E-Y, et al. Associations between outdoor time and physical activity, sedentary behaviour and fitness in children a systematic review. Int J Behav Nutr Phys Act. 2017. 屋外時間がMVPA増と座位減に関連。

– Tandon PS, Saelens BE, Christakis DA. Active play opportunities at child care. Pediatrics. 2012. 保育施設での屋外時間と実測活動量の関連。

– Engelen L, et al. Preschoolers’ physical activity in outdoor vs indoor settings Child Care Health Dev. 2013. 屋外で活動強度が高いことを示す。

– Fjørtoft I. Landscape as playscape The effects of natural environments on children’s motor development. Children, Youth and Environments. 2004. 自然環境での遊びが運動能力に有利。

– He M, et al. Effect of time spent outdoors at school on the development of myopia among children in China a randomized clinical trial. JAMA. 2015. 屋外時間の追加で近視発症を抑制。

– Scientific Advisory Committee on Nutrition (SACN). Vitamin D and Health. 2016. 日光とビタミンDの関係。

– Roslund MI, et al. Biodiversity intervention enhances immune regulation and health-associated commensal microbiota among daycare children. Science Advances. 2020. 園庭の自然化で免疫指標が改善。

– Brussoni M, et al. What is the relationship between risky outdoor play and health in children? A systematic review. Int J Environ Res Public Health. 2015. 挑戦的な外遊びの健康効果と安全性。

なお、近視や免疫など一部の根拠は主に学童期や短期介入の研究に基づくため、幼児期における長期的追跡のエビデンスは今後の蓄積が期待されます。

ただし、活動量・運動技能・骨筋負荷という主要メカニズムは幼児期にも妥当で、保育所での計画的かつ自由度の高い外遊びは、身体発達の促進策として強く推奨できます。

外遊びは情緒の安定・ストレス軽減・睡眠にどのように寄与するのか?

ご質問の3点(情緒の安定、ストレス軽減、睡眠)について、保育所での外遊びがどのように寄与するのかを、しくみ(メカニズム)と研究的根拠の両面から整理します。

あわせて、実践のポイントも提示します。

1) 情緒の安定への寄与
– 自然環境の回復効果と注意の再生
外遊び、とくに緑や土・木・水などの自然要素に触れる活動は、脳の注意資源の消耗を回復させ、イライラや不安の昂進を抑えます。

環境心理学では、自然の「やわらかな魅了(soft fascination)」が過度な集中や室内課題で疲労した前頭前野の負荷を下げ、感情の振れ幅を小さくする、と説明されます(注意回復理論; Kaplan)。

この効果は子どもにも認められ、緑地へのアクセスが多いほど情緒・行動面の問題が少ない関連が観察されています。

– 自己効力感と情動調整の学習
外遊びでは、登る・跳ぶ・走る・バランスを取るなど、子ども自身が身体を使って小さなリスクを見積もり、挑戦し、成功体験を積みます。

これが「自分でできた」という自己効力感を高め、情動の自己調整(失敗時の気持ちの立て直し、興奮のコントロール)を促します。

いわゆるリスキー・プレイ(適度な高さ・速度・未知の要素を含む遊び)は、情動調整や社交性の発達と関連し、むしろ過度に制限すると不安傾向を高め得ることが示唆されています。

– 社会的相互作用と安心感
外遊びは仲間との協力・交渉・ルールづくりが自然に生まれやすい場です。

共遊びを通じて生まれる所属感や、達成の共有は、情緒の安定剤として働きます。

大人の指示だけでなく、子ども同士が役割を調整できる余白が、自己主張と共感のバランスを学ぶ機会になります。

– 感覚統合の促進
風・土の感触、温度差、不整地の足裏刺激、環境音(鳥や葉擦れ)など、多様で予測不能な感覚入力は、中枢神経系の感覚統合を鍛えます。

適切な感覚刺激は過敏や鈍麻の偏りを和らげ、情緒の安定に寄与します。

2) ストレス軽減への寄与
– 自律神経・内分泌の変調
自然環境への曝露と中等度以上の身体活動は、交感神経優位を緩め、副交感神経を高めやすく、唾液コルチゾール(ストレスホルモン)を低下させることが、学齢期や保育年齢に近い集団でも報告されています。

森林・緑地での活動は、緊張の生理指標(心拍・血圧)を安定させる方向に働きます。

– 認知的ストレスの軽減
屋内では「座る・待つ・指示に従う」などの実行機能が連続的に要求され、これ自体がストレス源になります。

外遊びは、自己主導・探索的で、失敗が許容されやすい環境であり、認知的プレッシャーが低い。

これが心理的安全性を高め、ストレス反応の基礎値を下げます。

– 情動の発散と調整の両立
走る・ぶら下がる・押す・引くなど、大筋群運動は交感神経を一時的に上げる一方、運動後の鎮静効果(セロトニンやエンドカンナビノイド、BDNFなどの神経化学的変化)が生じ、負の感情が解放・再統合されます。

屋内より制約が少ない分、強度やリズムを子ども自身が調整しやすい点も、ストレス自己管理の練習になります。

– 微生物・自然接触の間接効果
土や植物由来の多様な微生物への接触は、免疫系の調整(いわゆる「オールドフレンズ仮説」)を通じ、慢性炎症レベルを下げ、気分やストレス耐性に好影響を与える可能性が示唆されています。

乳幼児期に自然に触れる機会が多いほど精神健康の指標が良好、という生態学的関連も報告されています。

3) 睡眠への寄与
– 概日リズム(体内時計)の整え
屋外の自然光(特に朝の強い光)にさらされることは、メラトニン分泌の位相を前進させます。

保育時間帯に十分な日中光を浴びる子どもは、入眠時刻が早まり、夜間睡眠が安定しやすい傾向があります。

幼児は成人より光に対して感受性が高く、午前中の明るい屋外活動は、夜の寝つき改善に寄与します。

– 身体活動量の増加
外遊びは歩数や中高強度活動(走る・登る)の時間を自然に増やし、睡眠圧(覚醒時間にたまる眠気)を高めます。

メタ分析では、子どもにおける日中の身体活動の増加が、就床潜時の短縮、総睡眠時間や睡眠効率の改善と小~中程度の効果量で関連づけられています。

とくに午前~午後早めの外遊びが、昼寝の質と夜間睡眠の両方に良い影響を与えます。

– 情動鎮静と就寝抵抗の低減
外遊びで情動が解放・調整されることで、就寝前の不安・過興奮が減り、寝かしつけの抵抗が軽くなる傾向があります。

屋外での社会的遊びは気分を改善し、就寝前の親和的なやり取りを増やすことにもつながります。

– 体温リズムと環境対比
日中の活動で深部体温が適度に上がると、その後の体温低下が促進され、入眠の引き金になります。

屋外での微気候(風・日陰・日向)の体験は、体温調節の成熟を助け、寝入りのスムーズさに寄与します。

実証的な根拠(代表例)
– 緑地・自然接触と子どもの精神健康
McCormick R (2017) は系統的レビューで、子どもの緑地曝露がストレス低下、情緒・行動問題の減少、注意機能の改善と関連することを示しました。

Wells & Evans (2003) は、田園地域の子どもで、家庭の緑が生活ストレッサーの影響を緩衝することを報告。

Tillmann et al. (2018) も、自然接触が子ども・青少年の健康に広く正の関連を持つと総括しています。

– 屋外環境と身体活動・発達
Boldemann et al.(スウェーデンの保育施設研究)は、樹木・複雑地形・広い園庭が、保育中の中高強度活動を増やすことを示しました。

Fjørtoft (2001) は自然遊び場の園児が、バランス・協調など運動適性で優位になることを示しています。

– リスキー・プレイと情緒
Brussoni et al. (2015) の系統的レビューでは、適度なリスクを含む外遊びは、身体活動と社会的健康を高め、情緒の適応にも寄与する一方、重大な傷害リスクの増加は限定的であると結論づけられました。

Sandseter (2011) は幼児のリスキー・プレイのカテゴリーと、その発達的意義を整理しています。

– ストレス生理指標
Dettweiler et al. (2017) や関連研究では、アウトドア学習や森林園での活動後に唾液コルチゾールが低下する傾向が示唆されています。

自然接触の生理的鎮静効果(心拍・コルチゾール低下)は成人で強固に示され、子どもでも方向性は一致しています。

– 光曝露・身体活動と睡眠
Akacem et al. (2016 など) は、幼児が光に対して強い概日反応性を持つことを示し、日中の十分な光曝露が就寝時刻の安定に資する可能性を示しています。

Krietsch, Armstrong, McCrae (2016) のレビューや、Zhang et al. (2020) のメタ分析は、子どもの身体活動増加が睡眠の質・時間に有益に関連すると報告。

屋外活動により、光と運動の両方の効果が同時に得られます。

– 行動・注意と屋外時間
Ulset et al. (2017 前後の研究) は、保育における屋外時間の多さが、自己調整や注意機能、情緒行動の適応と関連することを報告しています。

学校期の研究でも、通学や休み時間の緑が多いほど、注意欠如・多動の症状が軽い関連が見られます。

保育現場での実践ポイント
– 時間配分
午前中にまとまった屋外時間(例 60~90分)を設け、午後も短めに外気に触れる機会を作ると、概日リズムと昼寝・夜間睡眠の双方に好影響が期待できます。

WHO は3~4歳で1日合計180分以上の身体活動(うち中高強度60分以上が望ましい)を推奨。

外遊びはこの達成に適しています。

– 環境づくり
舗装だけでなく、土・草・起伏・木陰・登攀要素・可動素材(丸太、板、ロープ、水・砂場)を組み合わせ、子どもが強度や難易度を自己調整できる多様性を確保。

視覚的にも緑を増やすと回復効果が高まります。

– 活動の設計
自由遊びを中心に、鬼ごっこ・探検・自然物を用いた創作など、社会的協働や想像遊びが生まれる導線を意識。

午前はやや強度高め、午後は強度を落としてクールダウン的な活動(砂・水いじり、観察、読書の屋外版)にするなど日内リズムを設計。

– リスキー・プレイの安全管理
危険の除去ではなくリスクの適正管理へ。

見通しを確保し、ルールを子どもと共に作り、段階的な挑戦を支援。

重大事故のハザード(鋭利・高所の落下リスク、滑り危険)は工学的に対策しつつ、子どもの判断機会を残す。

– 光・気象・季節の配慮
朝の屋外時間を確保し、日陰・帽子・水分で熱対策。

冬季も防寒と体温観察を行いつつ、短時間でも日中光に当たる機会を継続。

花粉や大気汚染が強い日は強度・時間を調整。

– 個別ニーズへの対応
感覚過敏のある子には、静かなコーナーやノイズが少ないゾーンを用意。

慎重な子には段階的に成功体験を積める小目標を。

保護者と睡眠記録を共有し、外遊び量との関係を見える化すると調整が進みます。

– 成果のモニタリング
簡易な指標(午睡の寝つき時間・夜の就寝時刻、情緒の噴出回数、ささいないざこざの自己解決回数、朝の機嫌)を週単位で追跡し、外遊びの量・質との関連を話し合うと、職員間の共通理解が深まります。

まとめ
– 外遊びは、自然接触・身体活動・社会的協働・自己主導性といった複数の要素が相乗し、情緒の安定、ストレス軽減、睡眠の改善に寄与します。

– 生理学的には、注意資源の回復、自律神経の鎮静、コルチゾール低下、セロトニン・エンドカンナビノイドの調整、日中光による概日リズムの前進、睡眠圧の増大などが主要なルートです。

– 研究エビデンスは、緑地曝露と精神健康、屋外環境と身体活動、リスキー・プレイと情緒適応、光・運動と睡眠改善の各領域で支持的な結果が蓄積しています。

– 実装面では、午前の屋外時間の確保、多様な自然的遊具の整備、リスキー・プレイのリスク・ベネフィットバランス、季節対応、個別支援、効果の簡易モニタリングが鍵です。

参考文献(抜粋)
– McCormick R. Does Access to Green Space Impact the Mental Well-being of Children? A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2017.
– Wells NM, Evans GW. Nearby Nature A Buffer of Life Stress among Rural Children. Environment and Behavior. 2003.
– Tillmann S et al. Green spaces and health in children and adolescents A systematic review. Int J Environ Res Public Health. 2018.
– Boldemann C et al. Preschool outdoor environments and physical activity. Prev Med. 2006;および関連研究(2011)。

– Fjørtoft I. The Natural Environment as a Playground for Children. Early Childhood Education Journal. 2001.
– Brussoni M et al. What is the Relationship between Risky Outdoor Play and Health in Children? A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2015.
– Sandseter EBH. Characteristics of risky play. Early Child Development and Care. 2009/2011.
– Dettweiler U et al. Green classroom and salivary cortisol effects of outdoor learning. Int J Environ Health Res. 2017.
– Akacem LD et al. Circadian Phase and Light Exposure in Preschool-Age Children. 2015–2016一連の研究(Sleep 等)。

– Krietsch KN, Armstrong B, McCrae CS. The relationship between physical activity and sleep in children. Sleep Med Rev. 2016.
– Zhang Z et al. Physical activity and sleep in children and adolescents meta-analysis. Sleep Med Rev. 2020.

上記は代表的な根拠であり、国内外で同様の知見が増えています。

保育所における外遊びは、単に体力づくりにとどまらず、脳・心・体・睡眠をつなぐ「一石四鳥」の基盤的な実践と言えます。

適切な時間帯と環境設計で、毎日の習慣に組み込むことが最も効果的です。

社会性や主体性・創造性などの非認知能力は外遊びでどのように育まれるのか?

ご質問の要点は、保育所での外遊びが非認知能力(社会性・主体性・創造性など)にどう働くか、その仕組みと根拠を知りたいということですね。

結論から言うと、外遊びは「子どもが自ら目的やルールをつくり、仲間と折り合いをつけながら、身体と感情を総動員して挑戦する」経験を日常的に生み出します。

これは非認知能力の核である自己調整力・協働性・意思決定力・レジリエンス・発想の柔軟性を同時に育てる、極めて効率の良い学びの場です。

以下、具体的な育まれ方と、主な根拠を整理します。

1) 社会性が育まれるメカニズム
– 交渉・合意形成の反復 鬼ごっこや砂場づくりなど、外遊びはルールづくり・役割分担・順番決めが不可欠。

子どもは同年齢や異年齢の仲間と折り合いをつけ、主張と譲歩のバランスを学びます。

対人トラブル(ぶつかる、取り合い)も多いが、これを解く過程こそ社会性の練習場です。

– 規範の内在化と共感 集団ゲームでは「ずるをしない」「負けを受け止める」など暗黙のルールが生まれます。

他者の視点に立つ理論的心(Theory of Mind)を日常的に使うため、共感や道徳性の芽生えが促されます。

– 支え合いとリーダーシップ 高い所に登る、長い距離を走るなど挑戦課題を協力して乗り越える中で、助ける・助けられる経験、状況に応じたリーダー・フォロワーの交代が自然に起こります。

2) 主体性が育まれるメカニズム
– 選択と意思決定の反復 外遊びは「何をするか」「誰とするか」「どこまで挑戦するか」を子ども自身が決める場。

自分で決めて実行し、結果を振り返る流れが主体性の基礎になります。

– リスク評価と自己管理 斜面を下るスピード、木登りの高さなど、適度なリスクを自分で見立てる経験は、自己認識(自分の力量の理解)と衝動のコントロールを鍛えます。

小さな失敗を積み重ねて学ぶことが、粘り強さや自信につながります。

– 持続的関与(没頭体験) 十分な時間と自由度がある外遊びは、子どもが課題に深く没頭する「フロー」に入りやすい。

これは学習の自律性と集中の基盤です。

3) 創造性が育まれるメカニズム
– オープンエンドな素材・環境 土・水・枝・石、段差や斜面など自然環境は「多用途で制約が少ない素材(ルースパーツ)」として機能します。

同じ素材でも季節や天候で性質が変わり、試行錯誤を誘発。

これが発見と発明を日々生みます。

– ごっこ遊び・物語生成 外は空間が広く、役割や設定を拡張しやすい。

役割交渉や即興のルールづくりは発想の柔軟性、言語表現、記号機能を高めます。

– 問題解決的挑戦 「どうすれば高く積めるか」「川(溝)をどう渡るか」など、目的に対して手段を自ら設計し修正する経験が、創造的問題解決スキルを育みます。

4) 外遊びが支えるその他の非認知能力
– 自己調整・実行機能(注意の切替、抑制、ワーキングメモリ) 鬼ごっこなどのルール遊びや順番待ち、危険回避の判断は実行機能の訓練。

運動自体が前頭前野の働きを促し、注意力や情動調整の土台を強化します。

– レジリエンス(回復力) 転ぶ、負ける、思い通りにならない状況から立ち直る反復経験は、ストレス耐性と自己効力感を高めます。

– 心の健康・ウェルビーイング 緑や自然要素への曝露はストレス低減に寄与し、外での活動は気分の改善や睡眠の質向上と関連します。

情緒が安定することで学びに向かう姿勢も整います。

– 言語・コミュニケーション 仲間との交渉、説明、合意形成で語彙が増え、話す・聞くの力が磨かれます。

5) 保育所での実践ポイント(育ちを最大化する環境設計)
– 環境構成 高低差、隠れられる場所、登る・ぶら下がる・運ぶ・掘るなど多様なアフォーダンス(行為を誘う性質)を持つ園庭。

水・土・枝・布・板などのルースパーツを常備。

– 時間の確保 まとまりのある長めの自由遊び時間(最低でも30~60分以上)を毎日。

連続性が没頭と複雑な遊びの発展を支えます。

– 大人の関わり方 安全の土台を整えた上で「見守り」を基本に、必要時のみスキャフォールディング(言葉かけ、問いかけ、モデル提示)。

衝突はすぐに解決してしまわず、当事者同士の対話を支援。

– リスク・ベネフィットの両立 一律禁止でなく、動的リスクアセスメント(危険の可視化と子どもと一緒の対策)で「挑戦する権利」を保障。

– 異年齢の交流 模倣と教え合いが自然に起こり、社会性と自己効力感が高まります。

– 振り返り 遊びの後に短いリフレクション(うまくいったこと、次はどうする)を言語化。

非認知の学びが自覚化され、転移しやすくなります。

– 評価の視点 子どもの関与度・幸福感(例 ルーヴェン尺度)を観察し、環境と関わり方を調整。

結果よりプロセスを見る記録(ラーニングストーリー等)が有効。

6) 根拠(研究・制度・理論の要点)
– 日本の制度的根拠 保育所保育指針(厚生労働省)は「遊びを通した総合的な育ち」を基本に、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(協同性、自立・主体性、言葉による伝え合い、豊かな感性と表現、自然との関わり等)を明記。

外遊びは5領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)を横断して支える中核活動として位置づけられています。

– 実行機能と身体活動 乳幼児~学童期における運動・遊戯が注意・抑制・ワーキングメモリなど実行機能を高めるエビデンスが蓄積(例 Diamond & Lee, 2011; Hillman, Erickson & Kramer, 2008)。

活発な外遊びはこれらの機能に特に有効とされます。

– 休憩・遊びと学習の関連 学校の休み時間の自由遊びが学業の集中と社会的適応を支えることは国際的にも示唆(Pellegrini & Smith, 1998 など)。

就学前でも同様のメカニズムが働くと考えられます。

– リスキー・プレイの効果 適度なリスクを含む遊びは、運動能力、社会的自信、リスク評価能力の向上、過度の不安や抑うつの低減と関連(Brussoni et al., 2015 系統的レビュー)。

全面禁止より安全教育と見守りが発達に有利。

– 自然接触と精神的健康 緑地へのアクセスや自然遊びは、ストレス指標の改善、注意回復、情緒の安定と関連(Attention Restoration Theory 等)。

小児を対象としたレビューでも自然曝露の恩恵が示唆(McCormick, 2017; Tillmann et al., 2018)。

– ごっこ遊び・社会的ルールと自己調整 ヴィゴツキー系の理論と実践(Bodrova & Leong など)は、ルールに基づく社会的ごっこ遊びが自己調整の発達に資すると報告。

一方で因果効果の大きさは研究により幅があるため、環境・関わり方の質が重要という含みがあります。

– ルースパーツの理論 Nicholson(1971)の「ルースパーツ理論」は、用途が定まらない素材が多い環境ほど創造性と主体的学びが促進されると主張し、実践研究でも遊びの多様性と関与度の向上が報告されています。

– 身体と認知の統合発達 幼児期の粗大運動・巧緻運動の経験が後の自己調整・空間認知・言語発達と関連する知見が増加。

運動と認知は相互に支え合うという身体認知科学の枠組みからも外遊びの意義が説明できます。

7) よくある懸念への短い回答
– 安全面 ゼロリスクは発達の機会損失になり得ます。

重大事故の予防(環境点検、ルール共有、見守り)と軽微なけがから学ぶ機会の両立が国際的潮流です。

– 学習時間とのトレードオフ 外遊びは実行機能・情動調整・言語的やりとりを通じて、その後の学習効率を上げます。

短期的に机上活動を増やすより、長期的な学びの基礎体力を育てます。

– 雨天・冬季 防寒・防水装備の工夫と環境準備で通年の外遊びは可能。

雨や雪は感覚・科学的探究を豊かにし、創造的な課題を増やします。

8) 具体的な実践例(すぐに始められること)
– 週に数回、60分以上の外の自由遊びブロックを設定(連続性を重視)。

– 自然素材とルースパーツ(丸太、板、ロープ、布、パイプ、コンテナ)を常設し、子どもが組み合わせて使えるようにする。

– リスキー・プレイのガイドライン(高さ・速度・工具・自然要素・迷子の可能性など)を職員間で共有し、保護者にもリスクとベネフィットを説明。

– 遊び後の3分ふりかえり(写真や現物を見ながら「何がうまくいった?
次は?」)。

– 異年齢での共同プロジェクト(長い水路づくり、基地づくり等)を月1で実施。

– 観察記録は「関与度・感情・協働・自己調整のサイン」に注目し、環境改善に活かす。

まとめ
外遊びは、子どもの社会性・主体性・創造性といった非認知能力を、身体活動・仲間との相互作用・自発的意思決定・環境への働きかけという複数の経路で同時に育みます。

制度(保育所保育指針)もこれを支える方向にあり、研究的にも実行機能の向上、情緒の安定、リスク評価能力や創造性の促進が示唆されています。

十分な時間、豊かな環境、見守る大人、この三位一体がそろうほど効果は高まります。

日々の外遊びを「安全に挑戦できる学びの場」として設計することが、非認知能力を底上げする最良の投資になります。

参考にした主な知見(概略)
– 厚生労働省「保育所保育指針」 遊び中心の総合的な育ち、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿
– Diamond & Lee (2011) 幼児の実行機能を高める活動のレビュー
– Hillman, Erickson & Kramer (2008) 運動と認知機能の関連レビュー
– Pellegrini & Smith (1998) 休憩時の遊びが注意・学習に与える影響
– Brussoni et al. (2015) リスキー・プレイの恩恵に関する系統的レビュー
– McCormick (2017), Tillmann et al. (2018) 自然環境と子どもの精神的健康
– Bodrova & Leong ごっこ遊びと自己調整(ヴィゴツキー理論に基づく実践)
– Nicholson (1971) ルースパーツ理論

上記の多くは相関研究やレビューであり、因果の大きさや文化差には留意が必要です。

ただし、実践的な整合性と多様な指標の改善が繰り返し観察されており、外遊びが非認知能力の育成に資することは理論・実践の両面から支持されています。

効果を最大化するための時間・頻度・遊び環境の設計はどうすればよいのか?

ご質問ありがとうございます。

保育所での外遊びは、幼児の身体的・精神的発達の中核に位置づく活動であり、時間・頻度・環境の設計次第で効果が大きく変わります。

以下に、心身への影響の要点と、効果を最大化するための実践的な設計指針、そして根拠を詳述します。

外遊びが心身に与える主な効果

– 身体面
– 粗大運動能力の発達(走る、跳ぶ、登る、投げる、バランス)
– 骨密度と筋力の向上(跳躍・走行のような荷重活動が骨形成を促す)
– 体力(持久力・敏捷性)と健全な体組成(肥満予防)
– 姿勢・体幹安定性、感覚統合(凹凸地形や不均一な足場での運動)
– 視力保護(屋外光曝露は近視発症リスクを低下)
– 認知・情緒面
– 実行機能(抑制・ワーキングメモリ・注意の切替)の向上
– ストレス低減、情緒の安定(自然接触による回復効果)
– 睡眠の質改善(身体活動と日中の光曝露による概日リズム整調)
– 創造性・探究心(自然物・「ゆるい素材」への自由な関わり)
– 社会性
– 共同・協調・交渉・自己主張と他者配慮の学習
– リスク判断力・自己効力感(適度なリスクのある遊び)

効果を最大化する時間・頻度の設計
年齢に応じた国際ガイドラインを基礎に、保育所の一日運営に落とし込むと実践しやすくなります。

0~1歳

うつ伏せや床での自由運動を多く確保。

起きている間はできるだけ頻繁に体を動かす機会を。

屋外は30~60分を目安に、短時間を複数回。

ベビーカー散歩だけでなく、地面でのゴロゴロ・ハイハイの時間を確保。

1~2歳

1日合計180分以上の身体活動(強度は問わない)を目標に、屋外は合計60~120分。

午前・午後にそれぞれ30~60分の屋外自由遊び。

3~5歳

1日合計180分以上の身体活動のうち、中高強度(汗ばむ・息が上がる)を60分以上。

屋外は可能なら毎日120~180分。

最低でも午前60~90分、午後30~60分を目安に。

屋外での自由遊びに加え、5~10分のサーキットや鬼ごっこ等で中強度活動を意図的に挿入。

一日の配分例(3~5歳)

朝の屋外ブロック 60~90分(登園直後~おやつ前)
午後の屋外ブロック 30~60分(昼寝明け~お迎え前)
ブロック間に静の活動を挟み、メリハリをつける。

週あたり

毎日(週5日)継続。

雨天でもレインウェアで原則外に出る文化を整える。

荒天・警報時は屋内の粗大運動代替を用意。

連続座位の回避

連続して60分以上座らせない。

長い読み聞かせや制作の前後は短い屋外活動や体操で分断。

季節・天候への具体的対応

– 夏
– WBGTや暑さ指数に応じ、9~10時台中心に長め、正午前後は短め・日陰・水遊びへ切替。

こまめな給水、帽子、通気性の良い服。

– 日陰率30~50%のエリア設置。

ミスト・足洗い場・クールダウンの陰テント。

– 冬
– レイヤリングで保温しつつ、活動量を上げる遊び(鬼ごっこ、坂登り)を選択。

凍結・滑走面の点検を徹底。

– 雨
– 防水上下と長靴で水たまり・泥遊びを積極的に。

終了後に更衣動線と乾燥設備を整える。

– 空気質
– PM2.5やオゾンが高い日は強度を下げる、時間を短縮、屋内へ切替。

樹木の高木化は粉じん低減に寄与。

遊び環境のデザイン(アフォーダンスの多様性)
単一の固定遊具だけでは得られる効果が限定されます。

自然・地形・素材の「多様さ」と「選択肢」を用意します。

地形と動線

緩急のある斜面、段差、丸太渡り、不整地(芝・土・ウッドチップ・砂)。

走路と静的ゾーンを緩やかに分け、衝突を防ぐ。

自然要素

砂場・水場・土いじり、花壇・菜園、低木・高木、石・枝・葉・松ぼっくり等の自然素材。

季節変化が観察できる植栽。

ルーズパーツ(ゆるい素材)

板、丸太、ロープ、布、クレート、段ボール、ホース、パイプ、滑車やバケツ等。

子どもが自ら構成・創造できる素材を常備し定期的に入替。

多様な運動機会

登る(クライミングネット、立木)、ぶら下がる(雲梯)、跳ぶ(低いジャンプ台)、バランス(平均台、丸太)、投げる・蹴る(ボール、的当て)、乗る(ランバイク、三輪車)、スピード(緩い坂のコース)。

リスクのある遊びの安全化

適度な高さ・スピード・不確実性を含む活動を排除しない。

危険(ハザード)は除去し、リスクは見通しよく提示し、子どもと一緒に評価する。

年齢に応じた工具遊び(のこぎり・金づち)や火の扱い(焚き火・パン焼き)は、明確なルールと比率の高い見守り下で短時間導入すると効果が高い。

静のゾーン

自然観察、読書、虫眼鏡・図鑑のスペース。

感覚過敏児がクールダウンできる日陰の「逃げ場」。

インクルーシブ設計

車輪付き遊具用の滑らかなルート、感覚多様性に配慮したコーナー、視覚的境界、音刺激の逃がし方。

道具の軽量版や把持しやすい形状も用意。

保育者の関わり方(介入デザイン)

– 8割は子ども主導の自由遊び、2割は保育者が誘発する中強度活動や挑戦の促し。

– スキャフォルディング
– 新しい動きやリスクの手前で声かけ・モデリング。

「どこに足を置く?」「次にどうする?」と自己評価を促す。

– 社会性の支援
– 衝突が生じたら即解決ではなく、言語化の仲立ち。

役割交代、ルールの再交渉を促す。

– 言語・探究の統合
– 観察日誌、虫・植物の名前、数や形、測定(距離・時間)を遊びに埋め込む。

– 安全管理
– 「リスクベネフィット評価票」を園で運用。

日常点検リスト(転落・鋭利物・緩んだボルト・路面状況・水質)を每日確認。

見通しを確保する配置で巡回。

健康・安全と衛生の運用

– 熱中症対策 WBGTで活動強度と休憩頻度を調整。

汗かき後の塩分・水分補給。

帽子・日陰・水遊びで体温調節。

– 紫外線 UV指数の高い時間帯は帽子・長袖・日陰活用。

日焼け止めは保護者合意の上で。

屋外光は近視予防に有益だが、炎症を起こす日焼けは避ける。

– 感染症 屋外は換気がよく飛沫リスクが低い。

手洗い導線、砂・水遊びの運用ルール(入れ替え頻度、個人用のスコップ類)を明確化。

– アレルギー・喘息 花粉・PM情報を確認し、吸入薬や避難計画を個別に。

芝刈り直後の活動は避ける。

– 虫刺され・ダニ 長草の管理、虫よけの活用、帰室時の肌チェック。

園の条件に応じた工夫(都市部・狭小・屋上)

– 屋上・テラスでも、ルーズパーツと移動式プランター、可動式平均台・丸太で多様性を確保。

– 近隣公園を定期的に巡回する外出カレンダーを作成(週2~3回)。

フィールドが変わると活動強度と探究心が上がる。

– 室内でも「外遊びの代替」は可能だが、日中光曝露が不足しがち。

大開口部の利用、屋外回廊の活用を。

家庭との連携

– 服装・持ち物 季節に応じた予備着、帽子、レインウェア、手袋など「外に出られる準備」を常時園に置く。

– 週報で活動量・外遊び時間・挑戦の内容を記録し共有。

家庭でも週末の自然体験を促す。

– 近視予防・睡眠・情緒安定への効果をわかりやすく説明し、雨天実施や泥遊びへの理解を得る。

目標と評価(モニタリング)

– 週間の屋外時間(合計分)、中強度活動の有無、自由遊びのバリエーションを簡易チェック。

– 観察指標 跳躍回数、ぶら下がり秒数、バランス保持時間、園庭周回タイム等を遊びとして計測し、半年ごとに変化を見る。

– けが件数は「リスク許容範囲内の軽微な擦過傷が増え、重大事故は減る」方向を目標に。

リスクとハザードの区別を保護者にも公開。

根拠(主なエビデンス)
– WHO 2019年 5歳未満の身体活動・座位・睡眠ガイドライン
– 3~4歳は1日180分以上の身体活動のうち中高強度60分以上、長時間の座位回避を推奨。

– Canadian 24-Hour Movement Guidelines for the Early Years(0~4歳)
– 上記と同様の時間目標と、日中の屋外活動・光曝露の重要性を提示。

– He M et al., JAMA, 2015
– 小学校で屋外時間を40分追加したRCTで近視発症が有意に低下。

屋外光曝露の保護効果を支持。

– McCormick R, Health Place, 2017(系統的レビュー)
– 子どもの自然接触がストレス低減、注意改善、情緒の安定に関連。

– Fyfe-Johnson AL et al., Int J Environ Res Public Health, 2021(総説)
– 緑地・自然環境曝露と小児の精神的健康・認知の益を包括的に整理。

– Brussoni M et al., Int J Environ Res Public Health, 2015
– リスクを伴う遊びが身体活動・社会性・自己調整に有益で、安全性は適切な監督で確保可能と結論。

– Janssen X et al., Sports Med, 2013
– 幼児の身体活動が体力・運動技能・体組成に好影響を示すレビュー。

– ウイルス感染と屋外
– 屋外環境は換気と希釈により飛沫感染リスクが低いことが各種疫学研究で示唆。

保育現場でも屋外活動の継続は有効なリスク低減策。

– 日本の保育所保育指針(厚生労働省)
– 自然との関わり、戸外遊び、季節の変化への気づきを通した心身の健やかな育ちを重視。

具体的時間値は示さないが、日々の外遊びが基本と明記。

実装チェックリスト(簡易)
– 毎日、午前60~90分+午後30~60分の屋外ブロックがあるか
– 中強度活動(息が上がる遊び)を10~15分×2回以上行っているか
– ルーズパーツは週1回以上の入替・補充があるか
– 斜面・ぶら下がり・バランス・ジャンプ・投球の各アフォーダンスが場内に存在するか
– 日陰率、給水、着替え動線、点検記録、リスクベネフィット評価票が機能しているか
– 雨天用ギアと保護者合意が整備されているか

まとめ
– 毎日十分な屋外自由遊び(目安2~3時間、3~5歳は中強度60分以上)を確保し、季節・天候に合わせて運用することが、体力・骨・視力・睡眠・実行機能・情緒・社会性を総合的に伸ばします。

– 環境は固定遊具中心ではなく、地形・自然・ルーズパーツを組み合わせた多様なアフォーダンスを用意し、適度なリスクを学べる設計にします。

– 保育者は8割自由・2割誘発のバランスで、挑戦のスキャフォルディングと安全の見守りを行い、学びを言語化して家庭とも共有します。

これらを継続的に運用し、簡易な指標でモニタリングすることで、外遊びの効果は着実に最大化できます。

必要であれば、園の規模や立地条件に合わせた具体的な園庭レイアウト案や週間プログラム例もご提案します。

事故予防や天候対策を含め、安全と健全なリスクテイクのバランスはどう取るべきか?

保育所における外遊びは、子どもの心身の発達に大きな恩恵をもたらす一方、事故や天候リスクへの配慮が欠かせません。

「安全」と「健全なリスクテイク(挑戦)」の両立は対立概念ではなく、計画と観察、環境整備、子どもへの学びの支援により同時に実現できます。

以下に、外遊びの効果、リスクとハザードの考え方、事故予防、天候対策、運営体制、実践の具体例、そして根拠となる研究・ガイドラインをまとめます。

1) 外遊びが心身にもたらす主な効果
– 身体発達と健康
– 屋外では中強度〜高強度の身体活動が自然に増え、心肺持久力、筋力、粗大運動(走る・跳ぶ・登る)、バランス感覚、前庭・固有感覚の発達を促します。

– 日光暴露はビタミンD合成を助け、骨の健康に寄与します(過度なUVは別途対策が必要)。

– 幼児期からの活動習慣は肥満の一次予防に役立ちます。

– 認知・情緒・社会性
– 自らコースを選ぶ、距離や高さを見積もる、順番を待つなどの過程で、実行機能(注意の切り替え・自己制御・ワーキングメモリ)が鍛えられます。

– 小さな成功体験の積み重ねが自己効力感・レジリエンスを高め、不安の軽減にもつながります。

– 自然環境はストレス低減、気分の安定、探究心や創造性の喚起に寄与すると報告されています。

2) 安全と健全なリスクテイクを両立させる基本原則
– 「ハザード」と「リスク」を区別する
– ハザード(気づきにくく、重大な被害を及ぼす潜在的危険例 首が引っかかる紐、壊れた遊具、交通侵入の可能性など)は除去・隔離が前提。

– リスク(子どもが気づき、学びを伴いながら管理可能な挑戦例 斜面を駆け下りる、低木に登る、スピードのある滑走など)は、利益と危険の釣り合いを評価し、枠組みを整えたうえで許容。

– リスク・ベネフィット評価(RBA)
– 活動や場所ごとに「学習・発達上の利益」と「起こり得る傷害の重さ・頻度」を並べ、緩和策(環境整備、ルール、監督方法)を明記。

– 静的RBA(年間計画や定常設備)+動的RBA(当日の天候・子どもの様子に応じた即時判断)の二層構え。

– 足場かけ(スキャフォルディング)
– 大人が適切な距離感で見守り、必要に応じて声かけ・姿勢補助・中止の順で段階的に介入。

子どもが自らリスクを見積もる機会を残す。

3) 事故予防の具体策(設備・運用・指導)
– 環境・設備
– 遊具の設置と保守 鋭利部・挟み込み・首吊りリスク(紐が入り込む隙間)・腐食の有無を定期点検。

破損や緩みは使用停止。

– 落下対策 高所遊具の下は衝撃吸収性のある舗装(ウッドチップ、ゴムチップ、砂など)を十分な厚みで敷設。

水たまりや硬い縁への転倒動線を最小化。

– 動線設計 走路と静的遊具スペースを分離。

ブランコの前後には入退域防止の目印、十分なクリアランス。

死角を減らす配置。

– フェンス・ゲート 外部侵入と飛び出し防止。

水域・道路側は二重扉が望ましい。

– スーパービジョン(見守り)
– リスクに応じた配置 高リスクエリア(高所、水、スピードが出る場所)には近接監督。

低リスクエリアは巡回監督。

– 観察ポイント 年齢・個人差(衝動性、運動スキル、体調)、集団の密度、遊具の混雑状況。

– 人員体制 法令の職員配置基準を満たしつつ、外遊び時間帯は高リスクに補助配置。

園外活動は加配や保護者ボランティア活用も検討。

– 名簿確認 入場時・途中・退場時の顔点呼(Name-to-face)を徹底。

移動・トイレ・お着替えの前後で再点呼。

– 服装・持ち物
– 首にかかるマフラー・長い紐、フードのドローコード、長いネックストラップやネックレスは外遊び中は外す(絞扼予防)。

– つま先が覆われた滑りにくい靴、季節に応じた重ね着、帽子。

遊具でのヘルメットは引っかかりリスクがあるため原則不可(自転車等は可)。

– ルールと学び
– シンプルで視覚的なルール(例 ブランコの前後は待つ、滑り台は座って一人ずつ、木登りは大人の手が届く高さまでなど)。

– 子どもと一緒に危険を発見し対策を考える「安全会議」を遊び前に短時間実施。

ルールは押し付けでなく合意形成し、理由を伝える。

– 衝突を減らすため、走路の一方通行化、順番待ちの印、色分けゾーンなどの環境的手がかりを併用。

– 特定のリスク領域
– 高所・木登り 手がかりのある低木から開始。

登る前に「3点支持」「降りるルート確認」。

枯れ枝・腐朽の除去。

落下域の整地。

– スピード(坂道・乗用玩具) 見通しのよい坂のみ使用。

交差点に停止ラインと監督配置。

ヘアピンカーブや盲点の解除。

– 水 たらい・泥んこ・浅い水でも溺水は起こり得るため「腕の届く距離での常時監督」。

水深はくるぶし程度まで、排水動線を確保。

終了後の数分観察(吸い込み事故対策)。

– 自然要素・道具 虫さされ・トゲに備え、軍手・トングでの探究。

刃物やノコギリ等を使う探究は年長児の少人数・専任監督・明確な安全ルール・防具着用で段階的に導入。

– 事故対応
– 職員の応急手当・小児BLSの定期研修。

携帯救急セット(手袋、止血材、冷却材、洗浄水、アレルギー対応薬の管理体制等)。

– 重大ヒヤリ・事故は記録・分析し、環境・ルール・監督の改善につなげるフィードバックループを確立。

4) 天候・環境リスクへの対策
– 暑熱(熱中症)
– WBGT(暑さ指数)を活用し、基準値に応じて活動強度・時間を調整。

高温日(例 WBGT28以上)では朝夕に短時間、こまめな給水・休憩、日陰の確保。

WBGT31以上は原則屋外活動を中止。

– 服装は通気性・吸湿速乾。

濡らしたタオルやミストでの冷却。

水分は活動前から開始し、幼児は喉の渇きを訴えにくいため定時給水。

– 体調チェック(顔色、発汗、反応性)。

症状出現時は速やかに冷却・屋内搬送・必要なら医療機関へ。

– 寒冷(低体温・凍傷)
– 重ね着(ベース 保温・吸湿、中間 断熱、外層 防風・防水)。

露出部保護(手袋・帽子)。

– 濡れは冷えを招くため予備衣類を準備。

風の強い日は体感温度を考慮し短時間・頻回の屋内休憩。

– 紫外線
– UV指数3以上は日陰利用・つば広帽・長袖。

日焼け止め(SPF30以上・広域スペクトラム)は6か月以上で使用し、2時間ごとに塗り直し。

6か月未満は基本は日陰と被服で対応。

– 雨・ぬかるみ
– 防水アウター・長靴・替え靴下。

滑りやすい素材の遊具は使用制限。

泥遊びは温度・衛生に配慮し、終了後の手洗い・洗浄動線を確保。

– 雷・強風・台風
– 雷鳴が聞こえたら直ちに屋内退避し、最後の雷鳴から30分経過後に再開(30分ルール)。

開けた場所・高木直下・金属柵は回避。

– 強風時は枝折れ・飛来物に注意し、樹木下や高所遊具は使用停止。

– 空気質・花粉
– PM2.5や光化学オキシダントの注意喚起時は屋外活動を縮小・中止し、屋内での代替活動とする。

ぜん息等の基礎疾患児は個別配慮。

– 感染症と気象
– 高温多湿時はプール・水遊びの水質管理を厳格化。

冬季の屋外は換気代替として有効だが、密集回避や手指衛生を継続。

5) 組織運営と保護者連携
– 方針と手順
– 園として「外遊び推進」「RBA実施」「天候基準(WBGT・UV・雷等)」「事故時対応」「記録・報告」の文書化。

年次で見直し。

– 研修とカンファレンス
– 新任・定期研修で、リスクとハザードの見分け、観察・介入スキル、応急手当、天候判断を扱う。

事故・ヒヤリの事例検討を定例化。

– 保護者コミュニケーション
– 季節ごとの服装・持ち物のお願い、日焼け止めの取り扱い、外遊びの教育的意義を説明し、理解と協力を得る。

写真やエピソードで学びを可視化。

– インクルーシブ配慮
– 障害や慢性疾患のある子どもには個別RBAと合理的配慮(例 段差の少ない自然遊び、感覚過敏に配慮した静かなゾーン)。

挑戦の機会は等しく確保。

6) 実践例(リスク・ベネフィット評価の考え方)
– 斜面での駆け下り遊び
– ベネフィット バランス・下肢筋力・速度判断・爽快感。

– リスク 転倒擦過、衝突。

– 緩和策 見通しのよい斜度5〜15度、走路を一方通行、下部の障害物撤去、混雑時は人数制限。

保育者は坂下に配置し衝突を予防。

滑りやすい日は中止。

– 低木の木登り(最大到達高1.5m程度)
– ベネフィット 筋力、三次元空間認知、自己効力感。

– リスク 落下による打撲。

– 緩和策 健全な枝の選定、3点支持、降り方リハーサル。

下部は柔らかい地面。

大人の手が届く範囲で見守り。

混雑回避。

7) 根拠・参考となる研究やガイドライン
– WHO(2019)Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age 屋外時間の増加は身体活動と運動発達の向上と関連。

– Brussoni M et al.(2015)What is the relationship between risky outdoor play and health in children? A systematic review. IJERPH 外遊びにおける健全なリスクテイクは身体活動、社会的健康の改善と関連し、適切な管理下で重大傷害の増加を示さない。

– Sandseter EBH & Kennair LEO(2011)Children’s risky play from an evolutionary perspective リスク遊びは恐怖の適応的学習と不安軽減に資する可能性。

– Tremblay MS et al.(2015)Position Statement on Active Outdoor Play(カナダ) 外遊びの発達的利益と過度なリスク回避の弊害を指摘。

– Play Safety Forum / HSE(英国, 2012)Managing Risk in Play Provision 及び Children’s play and leisure promoting a balanced approach RBAの枠組みと「ハザード排除+リスクの学び」の両立を提唱。

– American Academy of Pediatrics(Yogman et al., 2018)The Power of Play 遊びが自己調整・実行機能・ストレス耐性に与える利益。

– 環境省 暑さ指数(WBGT)活用ガイド 学校・幼児施設での活動基準の目安(WBGTに応じた運動制限)。

– WHO / WMO UV Indexと皮膚保護の推奨 UV指数3以上で日陰・被服・日焼け止めの推奨。

– National Weather Service(米) 雷の30分ルール(最後の雷鳴から30分待機)。

– 厚生労働省 保育所保育指針、保育施設における事故防止関連資料 外遊びの重要性と安全管理の基本。

まとめ
– 外遊びは、子どもの身体・認知・情緒・社会性に広範な利益をもたらします。

– 安全と健全なリスクテイクの鍵は、ハザードを確実に除去しつつ、リスク・ベネフィット評価に基づいて挑戦の機会を設計し、観察と段階的介入で支えることです。

– 事故予防は「設備(設計・点検)・監督(配置・観察)・指導(ルール・自己評価の学び)」の三位一体で行い、天候・環境指標(WBGT、UV、雷、空気質)に基づく明確な運用基準を設けます。

– 組織的な方針、職員研修、保護者連携、事後の学びの循環が、安心して豊かな挑戦ができる園庭文化を育みます。

これらを実践すれば、外遊びの価値を最大化しつつ、重大事故のリスクを実用的な水準まで下げる「安全で豊かな遊び」のバランスが実現できます。

各地域の法令・基準や園の実情に合わせ、上記の枠組みを定期的に見直して運用してください。

【要約】
保育所での外遊びは、屋内よりMVPAを増やし心肺機能・肥満予防に有効。多様な地形や遊具が基本的運動技能、バランス・協調性、骨・筋発達と感覚統合を促す。屋外光は近視予防やビタミンD産生を助け、微生物曝露と相まって免疫・睡眠(概日リズム)を整える。自然環境やルーズパーツは多様な動きを誘発し、生涯の運動習慣の基盤を築く。外遊びはWHOや文科省が推奨する活発な活動時間の達成にも最適。

     

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